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どんなに計算しても、どんなに狙っても、目論見通りにはなかなかいかないものです。
逆に、何気にやったこと、やっつけで挑んだことが、ありえない奇跡を起こすこともまたよくあることです。
偶然というのは、かくも恐ろしい。
今回、ちょっとした偶然から、とんでもない怪作を生みだしてしまったこの旅行。
ちょっとふり返ってみるとしましょうか・・・

3日目 『Get on bound for HELL!!』

7:10。
朝日に照らされながらゆっくり起き上がる。多少胃のあたりがモヤモヤするが頭痛はなく不快感もない。
どうやら俺の身体は、低い勝率にもかかわらずアルコールに打ち勝ってくれたらしい。
これならひと風呂浴びれば完全に酒は抜けるだろう。


朝食前にさっそく風呂。せっかく温泉にきたのだから充分に堪能せねば。
ちなみに温泉好きのfantaは飲みがお開きになったあと、皆がくたばった後1人で風呂に入りに行ったらしい。
貸切状態かつ星空の露天風呂を満喫できたそうな。
そして朝食。朝食を食べたのは何年ぶりか。
子供のときから朝に食事をとる習慣がないのだが、このホテルの食事は実に美味しく、あっという間に平らげてしまった。
旅行は生活習慣をも変えてくれる。
一息ついたあと身支度を整えチェックアウト。出掛けに仲居さんにおすすめの食事処を尋ねる。
今前橋で『T-1グランプリ』という豚肉料理のコンテストをしている、と。よし、そこに行ってみようか。


ホテルを出て、まずすぐそこの赤城神社にお参り。
始終ご縁がありますように、と45円を賽銭に参拝。
その後おみくじを引く。末吉。ぬ、ぬおう。
『待ち人、遅けれど来る』。そうか、俺に彼女ができるにはまだ時間がかかりそうだ。


昼まで時間があるので、次に向かったのは群馬県庁。32階(33階だったっけ?)の展望台へ。
おおぉー、絶景絶景。
これ、夜景は絶対素晴らしいでしょう。夜もやってるのかな。


そして昼食。
ホテルで話に挙がったT-1グランプリ。決勝に進出したという6店舗のうち、どこにするかですが…
驚いたことに、4人とも満場一致で、『そばひろ』のソースかつ膳。
おそらく理由も満場一致でしょう。そばがついていたから。
豚肉料理のセレクトにはあるまじき理由でしょうが、昨日の酒もあり、あっさりしたものが食いたかったのだ……


腹を満たしたら、いよいよ本日の旅のメイン、宅録です。
メンバー揃って『T-Studio』へ集結。
…いや、スタジオ、といってもTi-Sのアパートなんですが。
今ちょうど隣人が出かけてる。絶好のチャンス。
なんとしても自作の曲に俺たちのコーラスを入れたいと息巻くTi-S。対称的にテンション↓の他3人。
なんやかんやで、いざレコーディングスタート。


【MISSION 1:コーラス】
マイクが1本しかなく、かつスピーカーで曲を流すとその音も拾ってしまうため、ヘッドホンをしたTi-Sが身振りでコーラスのタイミングを指示。
何度かのリテイクの後、収録成功。さて、ミキシングして再生。
…………………
うーん、やる気の感じられねーコーラスだー。
それにしても、自分の歌声を自分で聴く、というのはちょっとした罰ゲームだな。なんか心を削られる…


【MISSION 2:ラップ】
次はあるフレーズをラップ調で全員で合唱。
これまたヘッドホンをしたTi-Sが身振りでラップのタイミングを指示。
どうしてもリズムが走ってしまったが、なんとか収録。


【MISSION 3:デスメタル
大学時代、テスト勉強に倦んでいた最中、歌詞を考えろと言われ即興で書いた詩。
バイトで好きになった人に彼氏ができちゃったという内容の、それはそれはシットに狂ったロクでもない歌詞です。
そして大学卒業後数年の歳月を経て、宅録に目覚めたTi-Sが曲にしてくれたわけなんですが…
確かに完成度は高いんですが、あまりのおどろおどろしさにりんちゃんが泣くという、fantaの家では流せない唯一の曲となっているようです。
その曲のフレーズのところどころで、原作者である俺のシャウトを入れてほしいという。
・・・そんなもんできるかー!
謹んで固辞するはずだったのが……………いきがかり上、やる事に…………くそう。
ええい、こうなりゃとっとと終わらせたる!!


・・・(収録中)・・・「せめて死ぬまでボコらせろ!」 「Chapelにシャベルで埋めてやる」 「Bite!」 「Biiiite!!」・・・・


みんな次々サムズアップ。他人事だと思ってからに。
じゃ、再生。


・・・・・・・(再生中)・・・・・・・


…元々Ti-Sが歌ってた歌に私の声を重ねて録音するわけだから、多少なりともずれが生じる。
そのおかげで、強烈なフレーズが生まれてしまった。
俺のシャウトに元々のTi-Sの歌声が重なって、それはまるで必殺技を繰り出す主人公とそれをくらって断末魔の叫びを上げるザコ敵のよう。
あえて文字にするとこんな感じ。


『OOoooooaaaAA!! Get on bound for HELL!! GyoeaAA


一同大爆笑。これにはまいった。ちなみに黒字が俺の声ですよ。
俺の結婚式には(もしあればだが)絶対に流してもらいたくない曲ですな。





そんな奇跡の収録、隣人が帰ってきたため16時で終了。
その後は、ノリで新曲を作ろうかということになり…
俺作詞、Sulfateメロディライン、fantaコード進行、Ti-S総括、という分担で作業開始。
…わずか2時間ほどで形にする。
2500円とコールしたにも関わらず、カワイイ女の子だから、という理由かどうかは不明だが直前にコールした2000円で落札させたオークショニアへの不平を綴った疾走系の曲。
名づけて「Fake the Auction」。俺の書く詩ってこんなんばっかだな。
しかしこんなにあっさり出来てしまっていいものなのか?


こうして、楽しい一日は瞬く間に過ぎていったのでした・・・。


(続く)